当番世話人挨拶

大阪大学小児成育外科学教室におきましては、初代故岡田正教授は静脈栄養や栄養評価をはじめ外科栄養学の先駆者であり、同教授、福澤正洋前教授が、それぞれ第8回、第20回の本研究会を主催しております。母教室の意志を継いで本研究会を主催することは非常に光栄なことと存じております。 皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

第32回日本腸管リハビリテーション・小腸移植研究会 当番世話人
長谷川 利路
鳥取大学医学部附属病院
小児外科 特命教授

「第32回日本腸管リハビリテーション・小腸移植研究会」

“The Japan Intestinal Rehabilitation and Transplant Association (JIRTA)”

本研究会は当初3月に予定しており世界的な猛威を奮うCovid-19感染の影響で延期となっておりましたが、今回改めて開催できることをうれしく思います。

2019年7月にパリで行われたCIRTA (International Congress of the Intestinal Rehabilitation and Transplant Association)のRegistryによると、1985年1月から2019年6月まで、臨床小腸移植は世界で4103例行われており、短期成績は向上しているもののTotalの患者生存率は約50%で他の臓器移植に比し未だ良好ではありません。また腸管不全患者の予後を大きく左右する腸管不全関連肝障害への肝小腸グラフトの取得が困難であること、さらに肝障害を合併する患者の移植待機中死亡率が極めて高いことなどから、腸管不全に対して他の内科的、外科的治療とともに多角的に検討する腸管リハビリテーションのプログラムが発足し小腸移植はその1つの治療法として位置づけられました。このような背景のもとに従来のISBT (International Symposium of Small Bowel Transplantation)は2017年の第15回より上記のCIRTAに名称を変更しております。これに呼応して本研究会もこれまでの「日本小腸移植研究会」から、今回より「日本腸管リハビリテーション・小腸移植研究会」と名称が改められました。

腸管不全治療の基本は、可能な限り残存する自己腸管の機能を活用して、静脈栄養への依存度を減らすことで、カテーテル関連血流感染症(CRBSI)、カテーテルの血栓・損傷、腸管不全関連肝障害(IFALD)などの合併症の治療や予防を行うことです。カテーテル管理、栄養管理、薬物療法、腸管延長術、小腸移植などについて、適応、具体的な方法を多方面からアプローチして、個々の患者さんにとって最善の治療を行うことになります。世界各地でこれらの腸管リハビリテーションプログラムが施行され、共通のガイドラインのもと、基幹病院にて他職種の専門性を生かした治療が行われています。患者さんの登録システムとともに成果を出しており、腸管不全患者さんの治療成績は向上し、結果的には小腸移植の実施症例が減る傾向にあります。


今回の研究会では、この「腸管リハビリテーション」のテーマを大きく取り上げました。外科医だけでなく、内科医、小児科医、小児外科医、栄養士、看護師、薬剤師、ST,ソーシャルワーカー等、NST(Nutrition Support Team)のメンバー多職種の方々から演題を頂き、それぞれの立場から活発に討論できればと思います。日本においては、①患者登録  ②ガイドライン作成 ③各施設での多職種による腸管リハビリテーションチームの結成 ④教育や協力体制などが喫緊の課題であります。日本からは筑波大学小児外科教授、増本幸二先生に教育講演をしていただきます。今回の研究会の討論の結果が、日本における次のステップにつながればと思います。

臨床小腸移植については、2018年4月より小腸移植医療が保険収載となり、何例か臨床例が報告されています。北里大学の日比先生から特別講演をいただき、長年の懸案事項であった、「小腸移植適応評価委員会」を既存学会内に位置付けるべく日本での取り組みについてご意見を頂ければと思います。また、上述の腸管不全関連肝障害は進行が速く、肝・小腸同時、異時移植の適応と考えられる患者(特に小児短腸症候群)が多く存在し、その予後は極めて不良であります。このため、従来の脳死肝移植希望者(レシピエント)適応基準とは、異なった観点からのアプローチが必要かも知れません。その他、保険収載後に見られる新たな問題点も検討できればと思います。

皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。